死後事務委任契約とは

死後の事務手続きを委任者に任せる契約

死後事務委任契約とは、ご自分の死後の事務について信頼できる第三者を受任者として託しておく生前契約のことです。

人が亡くなると葬儀や埋葬、費用の清算など沢山の事務が発生しますが、これらは通常親族が対応することが前提となっております。

そのため、頼れる親族がいない方などの場合は、生前に予めきちんとした様式で一連の事務を第三者に委任しておく必要があるのです。

長寿高齢社会となり、また頼れる親族のいない単身世帯も大変増えております。このような社会背景から死後事務委任契約の必要性が生じているといえます。

また家族がいないわけではないけれど、負担をかけたくないとお考えの方も増えており、このような自律したシニアの方々にも死後事務委任契約はおすすめです。

死後事務委任契約と遺言書の違い

死後の手続をあらかじめ定めておく文書と言えばまず遺言書があります。

しかし、遺言書が効力をもつ事項は主に次のものに法律で限定されております。

・相続・遺贈など財産に関すること

・認知など身分に関すること などです。

そのため、それ以外の死後の事務、例えば葬儀に関する事柄や行政手続きを誰に任せるかなど、生前にきちんと決めおくためには「死後事務委任契約」が別途必要となるのです。

死後事務委任契約の受任者と相続人の関係

死後事務委任契約で委任した事項の中には、相続人が快く思わない内容が含まれている場合もあります。しかし、死後事務委任契約では、あくまで委任者の意向が尊重されるよう条文が作成されます。

だからこそ受任者は、相続人の意見には関わらず、契約事項を執行することができるのです。

死後事務委任契約と任意後見契約の関係

死後事務委任契約は死後の事務を委任する契約です。生前の見守りや財産管理などの対策も必要とされる場合は、任意後見契約を合わせて契約されることをおすすめいたします。

任意後見契約は必ず公正証書で作成します。この場合死後事務委任契約は、任意後見契約のオプションのような位置づけで契約書が作成されます。

死後事務委任契約が必要

死後事務委任契約は、次のような方におすすめです。

*おひとりさま

2020年における65歳以上の方がいる世帯で単独世帯が占める割合は28.8%で、30年前の約2倍に達しました。つまり高齢の方の約3割がいわゆるお一人様、ということになります。

お一人様やお子さんのいないご夫婦など身近に頼れるご家族がいない方にとって、死後事務委任契約は必須といえるでしょう。

*ご家族が高齢の方

家族や親族はいるけれど、高齢のため事務を任せるのが困難な場合にも死後事務委任契約が有効です。

*家族や親族に負担をかけたくない方

誰もが忙しいこの時代、身寄りがないわけではないけれど、ご自分のことで負担はかけたくないとお考えの方が増えております。

そのような自律したシニアの方にも死後事務委任契約はおすすめです。

*埋葬などについて具体的な要望のある方

近年は、海洋散骨や樹木葬など、ご葬儀や埋葬の選択肢が増えておりますが、見送るご家族の考えと食い違う場合もあり、実現できないことも考えられます。

ご自身の思いに叶うご葬儀を確実に執り行いたい方は、死後事務委任契約をご検討ください。

*内縁関係にある方

死後の事務手続きは、家族親族であれば別段契約書などがなくても対応できるものです。しかしパートナーが法律婚ではなく事実婚による場合で、カップルであることを証明する公的な書面がない場合は、死後事務委任契約を作成しておくのが安心です。

また事実婚の場合には、遺言書も必須といえるでしょう。

死後事務委任契約でできること

死後事務委任契約でできることは、葬儀埋葬についての他、各方面への連絡や病院や施設への支払いの代行、各種行政手続き、生前の契約の解約手続きなどです。

*行政手続き

死亡届の提出、健康保険証や介護保険証の返納、年金手続きなど行政手続き

※死亡届への署名は任意後見契約を締結していることが必要となります

*連絡対応

事前に指定された連絡先への訃報などの連絡

*ご葬儀対応

指定されたご葬儀、埋葬などの執行

*遺品整理

ご自宅の家財など、ご遺品の整理、形見分けなど。

*病院・施設の退去手続き

入院費用の清算、施設などの利用契約の解約、費用の清算など。

*契約の解約、費用の清算

電気ガス水道など生活インフラの契約、電話契約、クレジットカード、その他一切の生前の契約の解約手続き、費用の清算など。

死後事務委任契約の注意点

*契約のタイミング

死後事務委任契約は、他の一般的な契約と同様、判断能力が充分にある間しか契約することができません。

身近に頼れるご家族がいない方で、ご自身の万が一のことが心配になってきたら、なるべく早めに契約することをお勧めいたします。

*受任者

死後事務委任契約の難しさは、お亡くなりになった後の事務を生前に契約しておくことにあります。

お亡くなりになった後のことをご自身で見届けることができませんから、信用できる相手に委任することが大切です。

内縁関係など、家族同様に信頼できる相手がいる場合は、その方を受任者として任せるケースも考えられます。

*死後事務委任契約の費用

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死後事務委任契約にかかる費用は一般的に

①契約書作成費用 ②公証人費用 ③死後事務の執行に関する費用 の3種類です。

①と②については契約時に支払います。

③についてはいくつか清算方法があります。最も多いのは契約時に預託金を預ける方法です。ただ死後のことは見届けることができないだけに、お金を先に預けてしまうのは気がかりです。他には遺産から清算する、保険を利用するなどの方法があります。

死後事務委任契約内容

委任契約は、通常契約当事者が亡くなったら終了します。しかし死後事務委任契約は、委任者がお亡くなりになった後の事務の委任になりますので、委任者の死亡によっても終了しないように記載するのが特徴となります。

何を委任するかはご事情により、受任者と相談しながら任意に決めることができます。